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グローバルネイチャーポジティブサミットにおいて、ランドスケープアプローチを議論
2026.07.24
2026年7月15日、UNU-IASは熊本で開催された「第2回グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット」においてサイドイベントを開催し、政府、企業、研究者、地域社会の連携を通じて、ランドスケープアプローチがどのようにネイチャーポジティブな世界の実現を推進できるかについて議論しました。本セッションでは、日本における実践事例や、生物多様性の保全と持続可能な地域開発を統合するための革新的なアプローチが紹介されました。
冒頭、西麻衣子氏(UNU-IAS客員研究員/日本大学教授)は、現場での実践、研究、企業、国際協力といった多角的な視点からランドスケープアプローチを検討する必要性について概説しました。続いて、浜一朗(UNU-IASプログラム・コーディネーター)は、地域住民の生計を支援しつつ生物多様性の損失に対処するためには、多様な目標を持つステークホルダー間の調整を必要とする「統合された社会・生態系システム」としてランドスケープが理解されるべきだと強調しました。さらに、世界規模でランドスケープアプローチに関する知見の共有や連携を推進するネットワークとしてSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)を紹介しました。
プレゼンテーションでは、地域レベルでのネイチャーポジティブ実現に向けた具体的な取り組みが紹介されました。原田和樹氏(日本自然保護協会)は「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」について発表し、同アプローチが自治体による生物多様性アセスメントの実施、目標・指標の設定、そして順応的管理の導入を支援するものであると説明しました。また原田氏は、群馬県みなかみ町における協働の取り組みを例に挙げ、同町では自治体、企業、市民団体が連携し、森林再生、里山および野生生物の管理、持続可能な観光、木材利用といった活動に取り組んでいることを紹介しました。
パネルディスカッションでは、企業、地域の実践者、研究者、それぞれの視点から、ランドスケープアプローチの導入に伴う機会と課題について議論が交わされました。登壇者は、ネイチャーポジティブという目標の達成には、継続的な対話や知識の共有、そしてセクターや階層を超えた連携を通じて、多様なステークホルダーの強みを活かすパートナーシップが不可欠であると強調しました。さらに、eDNAモニタリングのように利用しやすい技術が地域社会を生物多様性保全に関与させる上で果たす役割についても言及されました。
長谷川琢也氏(一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン)は、農業、林業、漁業に従事する人々が環境悪化の影響を真っ先に受ける一方で、生物多様性保全のための資金や人的資源が限られているという現状を指摘しました。その上で、ステークホルダーとの関係性を保ち、ネイチャーポジティブな取り組みを推進できる地域リーダーを支援することの重要性を強調しました。
名取洋司氏(国際教養大学教授)は、里山というランドスケープが、人々と自然との間の何世代にもわたる相互作用を通じて形成されてきたものであると説明しました。また、人口動態や社会経済状況の変化により、従来の管理体制を維持することが困難になっていると指摘し、伝統的な知恵と、科学、教育、そして新たな制度的枠組みを組み合わせる必要性を強調しました。
このイベントはサミット全体の成果を補完するものであり、サミットは「熊本宣言」の採択をもって閉幕しました。同宣言は、自然を保全しつつ地域の生計を向上させ、社会的公正を促進するとともに、社会的に周縁化されたコミュニティ(marginalized communities)をエンパワーする「公正な移行(just transition)」を求めており、人間の活動と調和した自然保全の一例として、里山モデルを認識しています